ヒノキの森にて

盆栽のお教室に足を向ける。今日のお題は、“ヒノキの森にて”ということで、使った材料は、ヒノキとツツジ科のゴールテリアでした。さながら、手の平サイズのクリスマスといったところ。もうクリスマス?!と思うと、なんだか笑うけれど、ゴールテリアの紅色は赤く熟してかわいらしい。…私は、昔っから赤より紅色に憧れるクチだ。“紅色”は、赤より深く、色みが増す感じ。

さて、本日の学びその①。盆栽は、自然の風景に畏敬を払って、1本の木に託すことを言うねんて。言わば、“自然の風景”を形づくる、ということ。ふむ。なので、盆栽の基本樹形の1つでもある“懸崖(けんがい)”は、文字通り 断崖絶壁の崖に懸命に這いつくばっている樹を表現している、とか。崖の塵から芽吹き、光を求める樹の姿。そういったことに気づいて盆栽に目を向けると、不思議と荒波の波しぶきと海鳴りが容易に想像できる所が、摩訶不思議。異空間へ連れ去られてしまう。…ここに、魔法の絨毯もなく、ましてや、どこでもドアがある訳じゃないのに。うん。なんだか、面白い。

本日の学びその②。盆栽には“表・裏”があるということ。幹が、見る人の方へ前傾姿勢をとる。=これ正面。樹達は、思慮深く、見る人の方向へおじぎしているように見える。
どうぞ、どうぞ、とも言わず、ただただ礼儀正しく頭を下げる。日本古来から重んじられた“礼儀”を表すらしい。少しの動きが、何らかのサインを示しているというのは、日本の文化かもしれないな。歌舞伎なんかも、少しの仕草に想いを込める行為やろうし。…随分と繊細な文化だ。細部に神は宿る、というのはこの事かしら。
少しのサインに気づくか、気づかないかは自分次第。私は、目線を低くして、盆栽の一鉢に向き合った。静かに向き合っていると、吹く風に葉を静かに揺らして喜んでいるかのよう。…しゃべらんくせに、なんとも豊かな表情をするものねぇ、と感慨深い。

【今日のひと枝】ヒノキ/(学名:Chamaecyparis obtusa Sieb.et.Zucc) /ヒノキ科/常緑高木/樹高20−30m。山地に生えるが、多くは植林したもの。“火の木”とも書き表し、火切り板として火おこしするのに使っていた。